はた酒店

“酒屋でランチ”が人気のワケ 
野菜中心、“やさしい味”の秘密に迫る

「酒造りは人」の信念で営業
自社ブランドの地酒はすでに大山ブランド

急ぎ足で車が行き交う国道9号。
のどかな田園風景を抜け、町中へと入る手前、蔵構えが目をひく建物があります。
たぶんこの道を頻繁に利用するドライバーなら「あっ、見たことある」、そう思うでしょう。

「はた酒店」。
名の通り、酒屋。
しかし表に掲げられた「山陰の地酒」という大きな看板が意味するとおり、ただの酒屋ではありません。

お店の奥様でもある畑眞理子さんが各蔵元を自ら巡り、そこでじかに作り手と触れ合う時間を大切に、蔵元の人にほれ込んで仕入れた地元の酒がズラリ。
なかには、我が家で育てた酒米で作る自社ブランドの地酒「中山郷 夢語(ゆめかたらい)」も用意され、そこには山陰のいいものを伝えたい、山陰の素晴らしさをPRしたい、単に商売としての販売ではなく、地域そのそのものを発信したいという情熱がこめられています。

週2度だけのお楽しみ
“酒屋でランチ”が地元の女性層にヒット

そんな酒屋の一角、築約60年の馬屋(まや)を改装した場所にカフェを設けたのはもう7、8年前のはなし。
お酒を買いに来ることを目的にする人だけでなく、いろんな方々と接してみたい。好奇心旺盛な奥さんの思いのもとで設けられた空間では、いつも地元の方々を中心に客が集まり、笑い声が飛び交う賑やかさで、ほっこりとした温かい時間が提供されているのです。

その場所で今、話題のメニューが・・・。
それが週に2日、日曜日と月曜日に提供される日替わりランチ。

すべては手作り。
素材選びは当然、ドレッシング、調味料に至るまで他人の手に頼らず、ほとんどを自分達の手で作りあげるというこだわりようで、そんな配慮は料理にも反映され、“おうちご飯”として知る人ぞ知るお昼ごはんの名店として注目を集めています。

内容はまずパンランチか、ご飯ランチかをスタッフが事前に決定。
そこから献立を組み立てるのですが、この味を支える上で欠かせない人物が・・・。
奥さまの相棒にして、その味を支える料理パートナーでもある清水明子さんその人。

「彼女がいなければランチ営業はしなかったかも」奥さんがそう話す清水さんは、元々がはた酒店のお客さんとして奥様との付き合いが始まったそうで、その後意気投合。
彼女の料理センスにほれ込んだ奥様がランチの提案をしたことがスタートだったのだそうです。

彼女のセンスとは。

例えばこの日撮影した
「ご飯ランチ」 
800円(コーヒーor紅茶付 ※+100円でデザート付に)

その献立は、

肉団子と白菜のスープ
さつまいもと豚肉のハチミツからめ
ブロッコリーのナムル
ゆでニンジンとカボチャのサラダ
焼コンニャクのゆず味噌
大根の煮物・ゴボウの生姜煮
卵焼き、大根の漬物、ご飯
 の計10品

我が家の食卓にも並んでいそうな素朴な惣菜が並びます。
でも、決して家庭ではマネができない。

それが彼女の持つセンスそのもの。

素材は奥様が調達。
野菜はすべてが地元産。
酒米を自家生産しているだけあって地元農家の付き合いも古く、良質な素材が手に入るそうで、基本は無農薬、無添加にこだわり、生産者の顔が見える安心、安全な旬の素材を徹底しています。

そうした素材を彼女と奥様が連携し、役割を決め、丁寧に、じっくり時間をかけアレンジ。
一番ダシで仕上げる煮物、手作りの味噌で作る和え物、野菜を中心とした各料理の味を、偶然隣に居合わせたお客さんに聞くとその答えは「ん〜、やさしい味」。

“やさしい味”とはこれまた漠然とした表現ですが、一口食べれば思わず「わかるわ〜、その言葉」と頷くほど、他人が作ったとは思えない家庭の温もりを感じるのです。

なるほど“やさしい味”だ。

煮物が2つあれば必ず味付けを変える。調味料の違いはもちろん、ダシの濃さといった細部にまでこだわる徹底ぶり。
それが“やさしさ”というスパイスに変身するのでしょうね。

この日はなかったもののパンランチはさらにすごい。
その理由は、彼女にして「あまり出したくない(笑)」というほどに手がかかっているから。
国産小麦にあわせるのは、本職でさえ扱いが難しいとされる天然酵母。
通常のイーストよりも発酵時間がかかるうえ、微妙な時間の配分が味を左右する難しさゆえ苦労も絶えませんが、お客さんの満足を引き出す一心で、自然塩、とうきび、オリーブオイルなどの安心素材とともに早朝から焼き上げているのです。

自分達が笑顔になれる時間
ランチがつなぐ“絆”、伝わる大山への誇り

そんなこだわりは徐々に実を結び、一度食べたお客がまた新しい人を連れてはランチを目当てにやってきます。
時には用意された席に入りきらず、1階の販売スペースで待ってもらうことも。まさにうれしい悲鳴です。

しかし・・・。
忙しいランチタイムには強力な援軍がいます。
キレイな奥様のDNAをフルに受け継ぐ美人姉妹がお店をサポート。
母の理想とする店作りを知ってか、彼女たちもまた一皿一皿丁寧に、また愛情たっぷりに料理を仕上げていく様が何とも微笑ましい。

彼女達をやさしく、誇らしげに見つめる母。
そんな時間がそうさせるのか、真剣な中にも常に厨房は笑顔に包まれています。
お店の温かい雰囲気そのものに強い絆を感じるのは、取材した私だけでなく訪れる人それぞれがきっと感じていることなのでしょう。

酒屋でいただく地産ランチ。
町の名物にして、そこに暮らす人の素晴らしさを表現。

いいお店だ。

(基本データ)
施設名はた酒店
所在地鳥取県西伯郡大山町上市268
TEL0858-58-2025
営業時間9:00〜20:00(ランチは毎週日曜・月曜の11:30〜13:30のみ提供)
休み火曜(祝日の場合は営業 翌日休み)
駐車場10台(無料)
HPhttp://www2.sanmedia.or.jp/noccari/(はた酒店)